フッ素の発癌性に関する私的見解

最初に、フッ素の発癌性に関しては、過去に、その可能性は少ないという見解を 有していた一人であった事を最初にお断りしておきたい。 では何故、現在は、フッ素の発癌性があると考えているのかを述べて行きたい。 フッ素の発癌性に関しての資料を見る視点として、その研究の方法が問題にな るはずである、過去の研究の方法そのものに限界がある場合は、新しい方法で 得られた研究の結果が尊重されるべきである。 例えば今回の NTPの動物実験の結果は過去の動物実験と比べ、その飼料の中の フッ素の量を考えた場合、フッ素に発癌性がみられると考えた方が妥当ではなか ろうか。 この実験に使われた飼料には体重1Kgあたり毎日0.7~1.2mgのフッ素を摂取する ことになる濃度のフッ素が含まれている(C&EニュースP2)、これを人に換算する と体重60Kgで毎日 42~72mgのフッ素を摂取することになり、 飲料水からのフッ 素の摂取に換算してフッ素濃度4.2~7.2ppmの水を毎日1リットル 飲むことにな り人では重症の斑状歯が多発し骨硬化症も発症する濃度である。 (1)つまり、フッ素の付加なしでも、即ち実験動物の飲料水のフッ素濃度がゼロ の場合でも斑状歯も骨硬化症も発症して不思議の無い濃度の飼料が与えられて いたということであります。 今回の実験結果として、実験動物のマウスではフッ素を負荷しても雄でさえ中等 度の斑状歯しかみられず、骨硬化症が見られないという結果は、マウスがフッ素 の実験動物として不適当であるという事を示唆しているのではないのだろうか。 (2)この事と比較して、ラットの場合、雄雌共に重症の斑状歯がみられ骨硬化症が 発症しているという事は、ラットがフッ素にたいして人に極めて近い反応を示し ていると言える。 (3)さらに骨肉腫の発生が雄に見られるのも人の骨肉腫の発症が性差で男が女の 二倍の発生率であることを考えれば妥当な結果と言えるのではないのだろうか。 (4)さらにC&Eニュースに言及されているように肝臓癌の発生もドイツの論文で アメリカでの水道水フッ素化率と肝硬変の発症とが相関しているという研究結 果から見ても、フッ素が酵素の活性に影響を与えるという最大の特徴からみて、 酵素で動く人体のエネルギー変換、貯蔵工場としての肝臓にフッ素が悪影響を与 える結果として肝臓癌が誘発されても不思議はないのではなかろうか。 さらに疫学調査でのイアムイアニス・バーク両博士によるフッ素と発癌性にかん する研究は最初から、年令、人種、性差についての補正がされているのであるから 極めて信頼性は高い。アメリカの衛生局や歯科医師会の両博士の研究結果に対す る見解は誹謗中傷にあたると言えよう(「プリニウスの迷信」P109~112)。 そもそも今回のNTPの動物実験はアメリカにおける化学薬品の全般的見直し作業 の中で、化学薬品にコード番号を付け実験者には何という化学薬品の遺伝毒性を 実験しているのか知らされないままに行われた研究でフッ化ナトリウムに遺伝 毒性がある事が分かり(「フッ素に変異源はあるのか」P87)、動物実験がなされて いるという経過からみて。 上記NTPの動物実験でラットに発癌性がみられたという結論は、もっと重大な事 実であろう。 この実験はフッ素に動物実験で発癌性があることを証明した最初の実験として 位置付けられるべきだと考えた方が良いのではないのだろうか。 以上疫学調査、細胞実験、そして動物実験の結果としてフッ素に発癌性があると いう可能性は極めて高いと考える理由であります。 1991 8 19 成田憲一 ホームページ目次に戻る フッ素目次に戻る